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ニッセイアセットマネジメントの主力インデックスファンドである、<購入・換金手数料なし>シリーズの3つのファンドの信託報酬が11月20日から大幅に引き下げられることになりました。

内容は、現在楽天証券でのみ取り扱っている、三井住友アセッマネジメントのDC開放ファンドを強く意識したものになっています。3ファンドとも2015年11月12日時点では、同一アセットクラスの市販ファンドの中で最も低い信託報酬となっています。

細かい内容については、記事の最後にプレスリリースと信頼できる先輩投資家さんの記事へのリンクを貼りますので、そちらを参照してください。わたしが言及すべきことは特にありません。

1人のインデックス投資家としては「うれしい!ニッセイアセットさん思い切った決断をしてくれてありがとう~!!゚+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。+゚ これで楽天証券に乗り換えてまで三井住友アセットのDC開放ファンドを買わなくていいよー!!」という感謝の気持ちでいっぱいなのですが、心配していることもあります。

この記事では、わたしの考えている心配ごとと、<購入・換金手数料なし>シリーズへの乗り換えや積立先の変更を検討している人に向けての注意事項をお伝えしようと思います。

杞憂に終わることを願っている あんこもちの2つの心配ごと

信託報酬の引き下げはうれしいけど 事業としての採算は取れるのかな

一番の心配は、ここまで信託報酬を大きく削って、1つの事業として収益を出していけるの?ということです。各社が相次いで信託報酬を引き下げてくる展開もありえますが、そうなった場合、たださえ旨味の少ないインデックスファンドを販売・運営するメリットが関係各社にあるのかな?ということが気がかりです。

わたしは「知る人ぞ知るマニアな投資法」であるインデックス投資が、一般の人に広がってくれることを望んでいます。そのためには、インデックスファンドが販売会社と運用会社にとって「メリットのある商品だから宣伝してみるか」と思ってもらえる存在であることが必要不可欠だと感じています。

ニッセイアセットマネジメントは、おそらく純資産を今の何倍にも増やすことで採算を取ろうとしているのだと思われます。正攻法であり清々しく感じますが、全ての運用会社が真似できるわけではありません。(特に直販系は難しいと思います。)

それぞれの運用会社が自社の長所を活かした対抗策を打ち出してくれるといいなあと思っています。

インデックス投資家は浮き足立たないよう 冷静さもキープで

もう1つはわたし自身も含めたインデックス投資家の行動についてです。

近いうちに楽天証券で三井住友・DC外国株式インデックスファンドS(信託報酬0.16%)が一般開放される可能性があります。また、信託報酬の引き下げに追随するファンドが現れるかもしれません。

そのたびに浮き足立って既存の積立ファンドを全売却して乗り換えたり、(売却を保留したとしても) 積立先の変更を行う人が増えてしまうと、結果的に投資家と運用会社の双方が無用な損失を被ることになります。

前者の心配については、わたしが知りもしない業界事情にあれこれ思いを巡らせてもあまり意味がありません。そのため自分にできることとして、ファンドの乗り換えや積立先の変更をする際に気をつけてほしい事柄についてざっくりまとめてみます。

既存のファンドを全売却しての乗り換えは たいてい元が取れない

この問題については、「バリュートラスト|価値を生む・未来を託す・投資を歩く」のアウター・ガイさんが、具体例を出してわかりやすく伝えています。

記事の要点は、売却益にかかる約20%の課税負担が重く、それを信託報酬の差率で埋め合わせようとすると、数十年もの長い時間がかかってしまうということです。

アウター・ガイさんは自分で検証した結果を踏まえて、今まで積み立てたファンドについては相場下落時まで保有を続け、新しく積み立てるファンドを<購入・換金手数料なし>シリーズに変更するという意思決定をされています。詳細については下記の記事をご覧ください。

ニッセイAMの3ファンドへの乗り換えを考える /バリュートラスト|価値を生む・未来を託す・投資を歩く

ちなみに、乗り換えに伴うファンド売却のベストタイミングは、損益が±0の時です。

NISA口座での運用であれば、売却タイミングは考えなくてもOK

NISA口座の枠内での運用であれば、運用益への課税がないため、好きなタイミングで売却して大丈夫です。ただし非課税の枠はファンドを売却しても戻らないことにご注意ください。

積立先のファンドを変更する場合は 純資産(繰上償還の可能性)と実質コストに要注意

純資産と繰上償還の関係

既存の積立ファンドを保有したままこれからの積立先を変更する場合は、すぐに損失が発生することはありません。管理が煩雑になるためおすすめしませんが、こまめに積立先を変えても問題のない場合が多いです。

ただし、純資産(繰上償還の可能性)とファンドの実質コストについては注意が必要です。

特に純資産については、現在自分が投資しているファンドも含めて、証券会社や運用会社のホームページなどで定期的に把握することをおすすめします。

もし右肩下がりになっているようなら要注意。遠くない将来、繰上償還になってしまう可能性があります。

繰上償還は長期投資における最大リスクの1つです。純資産と繰上償還の問題については下記の記事で詳しく取り上げています。

積立ファンドを変更した時に考えた 純資産と繰上償還のこと

実質コストが大きく膨らむと 低い信託報酬が無意味になる

インデックスファンドは採用している指数(TOPIXなど)に連動した値動きを目標にしていますが、ファンドの入出金、個別銘柄の実質組入比率の違い、売買コストなど、信託報酬以外の変動要因があります。

「実質コスト」は、これらの信託報酬以外の変動要因を加味して計算したものです。

「ファンドの入出金」=「インデックス投資家のファンドの売買」が過剰に増えると、実質コストが膨らむ要因になってしまいます。場合によっては、信託報酬の引き下げ分以上に実質コストがかさんでしまうこともあり得ます。

ファンドの目論見書や運用報告書をこまめにチェックしている人であれば、リアルタイムでおおよその状況を把握できるのですが、資料を読みなれない人も多くいると思います。

そうした人は、半年から1年ほど待って純資産の伸びと実質コストを確認してから積立先を変えたほうが無難です。

主要インデックスファンドの実質コストについては、「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」の水瀬ケンイチさんと「インデックス投資日記@川崎」のkenzさんがわかりやすくまとめています。

わたし自身の頭を冷やすために記事を書きました

ニッセイアセットの思い切った信託報酬の引き下げは、SBI証券のユーザーであり、<購入・換金手数料なし>シリーズを主な投資先にしているわたしにとって、思わず舞い上がってしまうほど大きなニュースでした。

インデックス投資界隈は一時お祭り騒ぎになりました。わたしも祭りを楽しんだのですが、「いや、でも浮かれてばかりはいられないよね。」と冷静さを取り戻す必要を感じています。

あんこ家は、企業型DCと家計で積み立てている世界経済インデックスファンドから、<購入・換金手数料なし>シリーズその他の個別ファンドに積立先を変更し、より低リスク・低コストの運用に変えていくことを検討しています。(将来的には、楽天証券への引っ越しを視野に入れています。)

ファンドの乗り換えや積立先の変更は、様々な要素を踏まえたうえで判断するべき大切なことです。この記事は他でもないわたし自身を戒めるために書きました。もし不快に感じた人がいましたら、お目こぼしいただけるとありがたいです。

参考リンク

信託報酬率引下げ ( 投資信託約款変更 ) について|ニッセイアセットマネジメント

ニッセイ外国株式インデックスファンド等3ファンドが信託報酬を大幅に引き下げ(正式発表!)|インデックス投資日記@川崎

ニッセイ外国株式インデックスファンドほか3銘柄が信託報酬コスト低減|投信で手堅くlay-up! (わかりやすい良記事。類似ファンドの状況について触れていて、比較しやすいです。)